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2011/02/28

雨の塔  宮木あや子

雨の塔  宮木あや子
¥1,260(送料無料)




集英社
2007年11月
162ページ

「雨の塔」は、今月表紙絵も新たに文庫版が発売されました。

宮木あや子さんの小説を読むのはこれで2作目です。

「太陽の庭」につながる物語といいますか、「太陽の庭」の中の一部を抜き出して小説化した、そんな小説です。

「雨の塔」のほうが2年早く書かれているので、こちらの物語をふくらませて「太陽の庭」ができたのでしょう。

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陸の孤島ともいえる離れ島に、親の都合で追いやられた4人の女子高生を中心に話は進みます。

その島にある隔離された学校は、資産家の娘だけが入れる特殊なところ。寮があり、そこで生活しながら、親から呼び戻される日を待つだけの日々。いつか、親がその子を利用して事業拡大のため嫁ぎに行かせる駒となる少女たち。

だから、何不自由ない生活をしてきて、その学校でも勉強しなくてもかまわない生活をしながらも、誰もが心に傷を負い寂しさを抱える。

その学校は、携帯電話は持ち込めず、新聞やテレビやラジオもなく、親や友達などから送られて来た小包はすべて厳しく検問される。外界とまったく遮断され、情報を得ることが許されない。

その代わり、校内はひとつの巨大な町のようになっていて、最先端のファッションやおいしいものなどには不自由しない。といっても、少女たちはお金を持つことも許されず、カードのみ使用可能という、ここでも制限ある暮らし。

授業は受けても受けなくてもいい。なぜなら、先生が教えに来るわけではなく、有名校の授業を衛星受信してスクリーンを見ながらのものだから。さらに試験もない。

つまり、彼女たちが求められるのは、逃げ出さずただそこに「いること」だけ。親に捨てられたと思わないわけありません。

それぞれ違う環境で育ちそこで出会った4人の少女は、みなはっきりした強い個性を持つ子ばかり。

矢咲は、同性と恋愛をし心中しひとり生き残った少女。

背が高くショートカットでボーイッシュで、まるで男の子のフランス人形のような美しいルックス。それなりの世界の人間の間ではこの心中事件が話題になっていたため、親がほとぼりが冷めるまで矢咲を雲隠れさせたのだ。

そんな矢咲と寮が同室となったのは、有名なファッション・デザイナーの母を持つ小津。

母は中国人で、日本人と結婚したいだけのために小津を生み、その後中国へ戻り活躍している。両親から愛された記憶のない孤独を抱えた少女。

母の手伝いとしてモデルをしていたこともある小津は、ストレートのミディアムヘアできつい雰囲気の痩せ型美人。

さばさばした2人は、互いの過去をさぐることもなくほど良い距離感でうまく生活していたが、のち、もう2人に出会い運命を狂わせる。

三島は、その名を知らぬ日本人はいないというくらい有名な財閥に生まれた愛人の子。本妻の子ではないが一番愛されて育ったお姫様のようなタイプ。

小柄でロングヘアーでわがままだけどピュアな少女。この三島が、「太陽の庭」にも登場する。

そんな三島の親友でありまるで召使のようでもある都岡。父が三島財閥から資金援助を受けていて、三島のそばで見守るよう義務付けられた少女。

三島のことは好きだけど、召使気分が常につきまとう。夢もあったがそれもあきらめ、いつも優しく三島に世話を焼く。これまた美少女。

もちろん三島と都岡は同室。三島の食事は都岡が作ってあげる。


校内で会っても互いに言葉も交わさず目線も合わせないような中、気さくな矢咲が三島に声をかけるところから、4人が徐々に近づくようになる。

せまい世界にいる少女たちが少しでも友達ができて良かったなと思ったが、それが4人を追い詰めることになる。

三島は矢咲を好きになり、すでにこの世にいない矢咲の心中相手と同室の小津にヤキモチを焼く。

しっかり者の小津は、親に捨てられた寂しさが大きくなり心を壊していく。ずっと毅然とした態度で、ほころんでいた心を隠していたのだが、亀裂が入ってしまったのだ。

都岡は、今まで三島しか友人と呼べる存在はなかったところへ現れた小津に、友情を感じ始める。そして、自分の生き方に疑問を持つ。

物語終盤、矢咲は姿を消した小津を気にしながらも、親に呼び戻され晴れて学校を出る。

小津は、断崖絶壁に立つ学校で、海に身を投げ自殺する。自分で自分の心を抑制できなくなったのだ。

三島は、止めようと思えば止められたのに小津が死んでしまったことと、矢咲が去ったことで苦しむ。

だけど、だいぶ大人になったなと思ったのが、都岡に自由に羽ばたいてと言えるまでになる。

私が知らないだけで、日本のどこかにこんな特殊な場所があるのかもしれない。

親に愛されず、いつか「使える」日まで身を潜めていろと送り込まれる場所が。

とても温度の低い感情を持った少女たちは、傷ついたことであきらめ開き直ってたのだろう。でも、小津のように感情が爆発してしまい、結局悲惨な最期を向かえるのがが人間らしさな気もする。

映画にしたらおもしろそうな話。


宮木あや子さんプロフィール★

1976年神奈川県生まれ。
2006年「花宵道中」で第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞をダブル受賞しデビュー。

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