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2011/04/21

宇宙からの手紙  マイク・ドゥーリー

宇宙からの手紙  マイク・ドゥーリー
山川鉱矢、山川亜希子訳



角川書店
2008年8月出版
278ページ


ザ・シークレット」という2007年に発行された本がベストセラーになりました。
これは、ロンダ・バーン(1945年生まれ)というオーストラリア人の女性が書いた本です。

私はこれを読み、その後DVDを買いました。
DVDの中には、何人もの成功者と呼ばれる人たちが登場するのですが、マイク・ドゥーリーもそのひとりです。

「引き寄せの法則」により、成功したひとりです。

できたら「ザ・シークレット」を先に読んだほうが、こちらの「宇宙からの手紙」がよりわかりやすいかと思います。

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本書で言いたいことは、簡単に言うと「願えば叶う。ほしいものはすべて宇宙に願えば引き寄せられる」ということ。




このようにわかりやすくシンプルに書かれているのですが、意味を理解しようとせず読むとちんぷんかんぷんかもしれません。

それぞれ、宇宙が私たち人間に書いた手紙という設定になっているので、最後に「宇宙より」と必ずしめくくられています。

たとえば、次のような文章がありますが、すぐに理解できるでしょうか。

あなたに必要なものは、いつだって、すでにあなたの手元にあります。

そのことが見えなくなっているのは、それが手元にないとあなたが思い込み、ずっとよそを探しているからです。

数秒考えて、灯台下暗しと言いたいのかと思います。
しかしもっと違う意味もありそうだと考える。

つまり、今現在のその人の置かれている状況や環境によって、さまざまな捉え方ができるのです。


ほとんどすべての人の人生に欠けているものとは何でしょうか?

それは、自分の人生には、何ら欠けているものはない、と悟ることです。

こちらのメッセージも、うんそうだわと簡単に相槌を打てる人は少ないのではないでしょうか。

誰もが欠けているものが多いと思いながら生きているはず。
それが実はすべてそろっているのだと言われて納得するのは難しい。

その後読み進めると得られるヒントがこちら。

あなたの人生の背景をすてきに、根本的に、そしておそらく永久に変えるための、小さな秘訣があります。

(もし、あなたが、本気でそう望んでいればの話ですが)

あなたの視線を変えなさい。外を見ないで、自分の中を見なさい。

仏教で言うところの「内観」をしなさいと言われているかのよう。


まわりくどく書かれている箇所も多く、シンプルに答えを導きにくい表現法も多いのですが、要は「念ずれば通ず」。
宇宙に向かって強い思いで望みを託せば、宇宙は必ずそれに応えてくれるというのです。これは、自らの力で望みを引き寄せるということ。

決して宇宙を見くびってはいけません。

というシンプルな1行もあります。

確かに「引き寄せの法則」は事実だと思います。

どうしてもあれがほしいと強く願ったとき、思わぬ形で、または予想どおりの形でそれを手にしたという経験がある人もいることでしょう。

逆に、ものすごく手に入れたいものなのに、絶対無理だ…きっと手にできるはずがない…と思っていたら、そのとおり手に入れられなかったという経験も同じくらいあるでしょう。

このように、思考どおりの結果が生まれるというのは、自ら引き寄せているということは信じることができます。

いつも笑顔で人に優しい人間にはおのずといいことが起きるように、いつもイライラして人の悪口ばかり言っている人間にはいいことが起きるわけがありません。

このことは、誰に教わったわけではなくとも、生きる時間が長ければ長いほど自然に知ることになる事実でしょう。

どのようにしたらより良い生き方ができるか、学ぶことができる本です。

ですがやはり最初に書きましたように、「ザ・シークレット」のほうがわかりやすい。


マイク・ドゥーリー氏プロフィール

国際会計士から起業家となり、さらに宇宙からのことばの翻訳家に転身。
世界的ベストセラー「ザ・シークレット」に登場する賢者としても知られる。
現在、米国フロリダ州オーランドに在住し、TUT's Adventurers Clubを主催。
世界中を旅して回り、人生や夢、そして幸せについて公演している。

 
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2011/04/05

シュガータイム  小川洋子

シュガータイム  小川洋子



中公文庫
1994年4月出版
215ページ


なんともかわいらしいタイトル。

主人公かおるが、あることをきっかけに異様な食欲を見せ、食べたものをすべて日記に書き収めてから1日を終える、というところから物語は始まります。

一見過食症なわけですが、だからといってこのかおるはどんどん太っていくわけではないのです。体重に変化はない、細身の女子大生。過食症ではないと直感的にかおるは理解しているようです。

「シュガータイム」には、かおると、彼女を取り巻く人間模様が描かれているのですが、小川洋子さんらしく静かにゆるやかに話は展開していきます。

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ささやかな二つの出来事と一緒に、わたしの食欲はおかしくなってしまったのだ。」とかおるは自己分析。

母親は違うけれど本物の姉弟のように仲の良い弟が、とある神道宗教の協会へ修行をするために引越しをすることになったこと。

かおるがはじめたウェイトレスのアルバイト。宴会後残された「アイスクリーム・ロイヤル」なる巨大なアイスの塊に、アルバイトみなでスプーンを突き刺し黙々と食べて胃に収めたこと。

これらがきっかけとなったのです。

かおるはそのことを、心優しく明るい親友の真由子に最初に打ち明けます。

真由子は話を聞き、「今日はとことん、かおるに付き合ってあげる。かおると同じものを同じ量だけ一緒に食べてあげる。そうしたら何か、正体がつかめるかもしれない」と、その夜遅くまでいっしょに食べ続けます。真由子は夜中3時でリタイアしてしまい、正体もつかめませんでしたが。

かおるには吉田さんという彼氏がいますが、彼に打ち明けることはありませんでした。

かおるが食材を大量に調達する「サンシャイン・マーケット」がとても魅力的に書かれていて、お腹が鳴りそうになりました。

食欲が以上になってから、かおるはそこを「特別美しいマーケットであることに気付いた」といいます。夜の照明や、いつも完璧に整頓されている陳列棚や、静かな店内。

サンシャイン・マーケットの商品たちは、どきっとするほどけなげな視線をわたしに投げ掛けてくる。決して押しつけがましくなく、きちんと整列し背筋を伸ばしたその視線を、わたしはどうしても無視できない。

と、かおるがどれだけサンシャイン・マーケットの食べ物たちに惹かれているかがわかります。

それと同時に食いしん坊な私は、その輝くサンシャイン・マーケットを想像して、ごくりと生つばを飲むのでした。


かおるの食欲だけが物語りのメインではありません。同じくらい登場するのが、弟である航平について。

ちょっとした宗教のようなものの修行を始めたとはいえ、航平はいつも穏やかで物静かな男の子。修行について動揺する母親を尻目に、かおると航平は落ち着いて現実を生きます。

航平の特徴として、「美しいまばたきをする」こと、背が大きくならない障害を抱えていること、この2つがあげられます。

どちらの特徴も、はかなげで繊細な、思慮深い航平を描くにはなくてはならないポイントに感じられるのが不思議です。

かおるが11歳、航平が8歳のときに初めて2人は引き合わされるのですが、そのときの印象をかおるは次のように語ります。

わたしはこれほど美しいまばたきを見たことがなかった。・・・(略)・・・

航平はとてもゆっくりとまばたきをした。一瞬、このまま目を閉じてしまうのではと、心配になるくらいだった。

そしてまつげは蝶の触覚のようにか細かった。一回まばたきをすると、そのか細いまつげが微かに震え、目元を優しい風が過ぎていったかのようだった。

途中何度も、航平がゆっくりまばたきをするシーンが出てくるし、そのシーンをかおるが回想するところも出てきます。航平を愛おしく思うかおるの気持ちが、まばたきに表れているかのよう。

まばたきが象徴するものは、何でしょう。

彼の心の中をのぞくのは難しかった。彼は自分の気持ちのすべてを、あのまばたきの中に閉じ込めていた。

とあります。私には、航平が、まるで仏様のように落ち着いた優しいまなざしで、いろいろなものをじっと見つめる様子が思い浮かびます。

実際、航平の存在はかおるにとって「癒し」のように思えました。航平のまばたきを見ることで、また彼と同じ時間を過ごすことで、かおるは自分の芯のようなものを保っていたかに思えるのです。

かおるの彼氏、吉田さんも思慮深く物静かで、どこか航平とつながる感じのする男性。2人の関係はとても静かで、情熱はあまり感じないものに見えたのですが、かおるは確かに吉田さんのことが好きでした。

吉田さんもかおるのことを想っていたのに、精神科のカウンセリングで出会った心を病む女性とともに海外へ研究留学へ旅立ってしまいます。

深く傷いたり動揺したりしないかおるの描き方は、小川洋子さんらしいキャラクター設定だなとつくづく感じます。もちろんショックだったはずなのに、そのような描写は一切なく、ただ静かに現実を受け入れるといった様子。

吉田さんは別れの手紙をかおるに送るのですが、彼女がそれを読んだのがサンシャイン・マーケットの片隅だったというのも、今まで続いてきた物語を大きく完結させるかのようでおもしろいと思いました。

最後、かおると真由子、航平、真由子の彼氏の4人で野球の試合観戦に行きます。かおるが、紙吹雪を空に向かって何度も投げるところで物語は幕を閉じます。

かおるの食欲がどう収束したのかは結局書かれていませんでした。そこは読者の想像にゆだねたのでしょう。

現実世界を舞台にして描かれているのに、どこか夢物語のようにも見える「シュガータイム」は、いつもながら透明感のある小川洋子さんらしい小説でした。

いつも感じるこの不思議な空気感が大好きです。この空気感に浸りたいがために、小川洋子作品を読みあさりたくなるのです。

文庫版の解説は、林真理子さん。すぱすぱ言いきる書き方は潔く読みごたえがありました。


小川洋子さんプロフィール

1962年、岡山市に生まれる。
早稲田大学第一文学部卒。医大秘書室に勤め1986年、退職。
1988年、「揚羽蝶が壊れる時」により第七回海燕新人文学賞を、 1991年、「妊娠カレンダー」により第104回芥川賞を受賞。
2004年、ベストセラーとなった『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞受賞。 


小川洋子著書(一覧)
  
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