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2011/11/27

きことわ  朝吹真理子

 
¥1,260(送料無料)


新潮社
2011年1月発行
141ページ
第144回芥川賞受賞作



まず、不思議な響きのタイトルに惹かれます。
造語かなと思いきや、今作の主人公の女の子2人の名前なのです。
それは、1ページ目をめくってすぐにわかります。

「永遠子は夢をみる。
貴子は夢をみない。」

とはじまるのです。とわこ、きこ、と読みます。

永遠子は貴子の7歳年上。とても仲の良い2人ですが、姉妹ではありません。貴子の別荘の管理人の娘が永遠子。
貴子が家族と別荘に来る時期に、永遠子も遊びに行き親しくしていました。この時、永遠子15歳、貴子8歳。

どんなに仲良くとも、大人になるにつれ関係は薄れて行くもの。
違う人生を歩む2人は全く会うこともなくなります。
だけど、25年ぶりに再会することになります。

物語は、幼い頃の思い出と、現在を行ったり来たりしながら語られます。あえて、なのかもしれませんが、読んでいると、現実に起こっていることなのか、空想の世界が語られているのか、その境界線がつかみにくくなることもありました。

朝吹真理子さんの作品ははじめて読んだのですが、文体が独特です。
あとで少し読み返したらそうでもなかったのですが、少なくともはじめて読んだ時には、「ちょっと苦手かも‥」と感じました。
そのため、物語にのめりこむまで時間がかかりました。最終的にはのめりこむ前に物語が終わってしまいましたが。

絵画で言えば、対象物がくっきり描かれない水彩画のような作品だと感じます。現実と空想と夢のはざまでゆらめくような、つかみどころのなさ。

過去を思い出し、それでも現実を生きる2人の女性には郷愁の念を見ました。過去を思い出すと言っても、そこに苦しみやつらさはありません。静かだけれどキラキラ輝いた思い出がそこにはあります。

全体的に、寝起きの頭のようにぼんやりした印象でまとめられているのですが、どこか懐かしい気持ちにもなりました。
この小説を読み、久しぶりに小学生時代の友達を思い出しました。


★「きことわ」で第144回芥川賞を受賞した朝吹真理子さん  by.YouTube




朝吹真理子(あさぶきまりこ)さんプロフィール

1984年東京生まれ。慶應義塾大学前期博士課程在籍(近世歌舞伎)。
2009年「流跡」でデビュー。
2010年、同作で堀江敏幸氏選考によるドゥマゴ文学賞を最年少受賞。
2011年「きことわ」で第144回芥川賞受賞


★著書

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